翼端に付いてる板って何のため?機体重量が増えるのに燃費が良くなる?!飛行機が飛ぶ原理と、ちょっと気になる翼端の秘密と仕組み ~航空機解説シリーズ~
こんにちは、しののめです。
今年、早くも後半戦に入りまして、カレンダー見て実感がわきました。
やること多すぎてあっという間に都市が終わりそうですが汗汗
さて、今回はTwitterで聞いてみた結果についての記事です。
翼端のコレ、名称と役割知ってる方どのくらいいる?? pic.twitter.com/ZnUlbH75Xz
— しののめ✈ (@shinonomeDIVA) 2020年7月26日
上
— しののめ✈ (@shinonomeDIVA) 2020年7月26日
とまぁこんな感じのようで、飛行機マニア少な目の僕の周りではわからないのも無理はないと思ったのですが、航空ファンの方々にもちょっとコアな内容に目を向けてほしいと思い、記事を書こうと思いました。
改めて問います。翼端で立ってる板、なんだと思いますか??
なんか翼端が上向いてますよね。
答えは……………カッコつけ?
違いますw
正解は、 ウィングレット というものです。
ウィングレットなんて名称までついてて、何のためにこんな事やっているのかと言いますと…
燃費が向上します
え?????翼端に板くっ付けるだけで?って思いますよね。
まぁ、大幅な削減になるかといわれるとそうでもないし、これが全てというわけでは無いですが、燃費をよくするための数多くある策のうちの1つと考えてもらえればと思います。
これを理解するにはまず、飛行機が飛ぶ仕組みについて簡単に知ってもらう必要があります。
(この後少し学術的な話をするので、苦手な方は下の大文字、太字まで飛んでください)
もっとも一般的なのは「ベルヌーイの定理」を用いて説明する方法です。多分有識者の方は皆これで説明始めると思いますw
1738年にスイスの物理学者、ベルヌーイさんが発見した定理はこんな感じ
P=1/2ρV^2+ρgz=一定
簡単に説明すると、
流体の速度が上がると圧力は下がりますよ
流体の速度が下がると圧力は上がりますよ
ということです。
ちょっと物理学に通じる方はピンと来たかもしれません。
飛行機はエンジンによる推進力で進みますから、翼に当たる空気流は流体として考えてよいってことです。
やっと翼の形が出てきました。
そのうえでマグヌス効果という考え方を参考にするとこんな結論が出てきます。
翼上面と翼下面を流れる空気流には速度差があります。
上面の方が速く空気が流れ、下面の方が遅く空気が流れるのです。
→翼上面と下面の間に圧力差が生じ、その圧力は翼上面の方が低くなります。
物体というのは圧力の低い方に吸い寄せられますから…
つまり、(おまたせ!ここ結論!!)
翼上面・下面に流れる空気の速度差でできた圧力差によって、飛行機は上に引っ張り上げられている
というようなイメージで大丈夫です。
実際には流体の粘性なんかも関わってくるので、もう少し複雑なのですが、中学生くらいでも理解できるような書き方を目指しているので、省略しますw
流体の粘性については「失速」についてまとめる時に書いてみますかねw
話がそれました。
飛行機が飛ぶ仕組みは理解していただけましたか??
さて、ここからが本題です。(ながーいながーい前置きだった。。。)
翼のあるところの空気の流れ方はわかりましたね。
では、翼端に目を向けてみましょう。翼端は極端に言えば、翼の切れ目。
急激な形の変化が起きていますよね。
そういった部分では空気の流れが変わってしまいます。これは驚きますよ。どんな風に流れるかと言うと…
なんと、翼端では空気の流れが渦になってしまいました。
これのことを、「翼端渦」と呼ばれています。
渦くらいなんのこっちゃって思いますか?www
実はこの渦、結構バカにできなくてですね。。。
実際に動画見てみると皆さんビビると思います。僕も初見ビビりました。
元:
ビックリしましたか??
飛行機のことを全く知らない友人にもこれを見せましたが、怖がっていましたww
まぁそれはともかく、これが翼端渦の正体です。大きな渦でしたよね。
大手ブログさんだったりすると、ここからの話は割と省略されがちなんですが、僕は知識がちゃんとありますから、お教えしたいと思います。
この翼端渦、飛行するのには大きな抵抗力になってしまいます。
なぜかというと、
翼端渦によって発生した、地上方面へ吹き下ろす流れ(誘導速度という)によって、本来発生していてほしい揚力の向きがズレてしまうからです。
簡単にするとこんな感じ
これによって発生する抵抗力のことを誘導抗力と言います。
これ、飛行機にとってはかなりのパワーロスになってしまいます。抵抗力が発生した分、エンジンで燃料を燃やして力を補いますから、燃料も多く使うことになってしまいますね。前にも解説しましたが、飛行機の燃料代はバカにならないです( ;∀;)
ですから、飛行機を設計する人たちは翼端渦とにらめっこして、どのような翼端の形にすれば翼端渦をできるだけ小さくすることができるか
といったことを永遠に悩み続けているわけですね。
ただ、翼端がある限り、翼端渦をゼロにすることは不可能だと思います。
もっと翼端が平べったくなればもっと小さくすることは可能???わかんないや
ですから、飛行機メーカーはさらに渦を小さくする部品を考案するわけです。
それが…
- メーカー:翼端渦を小さくする翼端はうちの標準です!!燃費もすごく良いです!!うちの飛行機買って!!さらにオプションとして、さらに翼端渦を小さくする部品(ウィングレット)を付けませんか?!燃費もっとよくなりますよ!!
- 航空会社:そういうことなら…うちは長距離を飛ばす路線も多いし、それ20機買わせてください。あとそれ全部にウィングレット付けてください。
というようなやり取りになるわけですねwwww
ウィングレットの目的は、燃費の向上!
これが翼端に立ってる板、ウィングレットの正体でした!
余談として。
じゃあウィングレットを付けることで、どのくらいの燃費向上になるのかと言いますと、まぁおよそ4~5%程と言われています。
前も話した通り、飛行機は長距離路線だと、一度にドラム缶数百本分の燃料を消費しますから、1フライトごとに5%燃料の消費が減るというのはとてもありがたい話なんですね。
その一方で、ウィングレットは重量増加になってしまうという欠点もあります。
B767-300ER型機という飛行機があります。
ANAが使用している機体で、国際線・国内線問わず使われているようですが
(撮影: @Blue605A 氏)
翼面からのウィングレット高さが1.6mくらい、重さが片側につき1.5tほどの重量増加になります。両側につきますから、1機体あたり3tも重さが増えますねww
おそらく、重量増加と燃費を天秤にかけて、燃費向上の効果が強くなるような機材運用をしているのだろうと思います。
また、ウィングレットの効果は燃費向上のほかに、翼端失速の防止もあるのですが、こちらは「失速」を解説しないとダメなので、またの機会にしましょう。
最後にもう一つ。ウィングレット付きの機体と、付いていない機体の操縦感覚についてですが、これはどちらもそんなに変わらないようです。パイロットじゃないので詳しい話は知りませんが
とまぁこんなところです。今度空港に行ってウィングレット付きの機体を見たら、
「お!燃費のいい飛行機じゃん!!」って思っていただけたら幸いですww
長々とお付き合いいただき、ありがとうございました!
(終)
過去記事もよろしくお願いします。
~航空解説シリーズ~
普段は旅行したり、レビュー書いたりしてます